裁判を公開することは憲法で保障されており、
基本的には誰でも傍聴することが可能です。

しかし、なぜか「裁判の撮影」は禁止されています。
今回は裁判を撮影・録音してはいけない理由を紹介します。



イギリスでは2013年から主に控訴審を扱う裁判所でのカメラ中継が開始された。
きっかけはメディア各社や報道協会の働きかけだという。

この目的は一つ、
「裁判の透明性を高め、国民の司法制度に対する理解を深める」というもの。

日本の場合、テレビで裁判に関するニュースが放送されるときには、
裁判官や弁護士が着席して被告人らの入廷を待つ映像や、
公判中の被告人の様子が描かれた数点のイラストを使った映像が出てきます。

日本では法廷内でのカメラ撮影が厳しく制限されていて、
被告人が入廷する前の冒頭シーンしか撮影が許されていないようです。

裁判の撮影を認めることは裁判の公開や
傍聴の自由の趣旨に沿っているように思えるが、
どうして禁止されているのだろうか。

裁判を撮影・録音してはいけない理由

裁判の公平を担保するため

日本では刑事訴訟規則第215条及び民事訴訟規則第77条により、
裁判中に裁判長の許可を得ずに法廷内の写真を撮影することができません。

裁判の場においてはその模様を写真や映像で撮影しようとする場合、
各裁判における裁判長の許可が必要となる事が法に定められています。

禁止されている理由としてはプライバシー、公平性、
審議の邪魔になるなどが挙げられます。

一方、米国で映像化されている理由について
米国ではかつて差別や買収などが横行していたため
公開を徹底する必要性があったとの意見を述べている。

確かに撮影によって、証人や被告人が萎縮してしまう可能性があります。
また進行に支障をきたす可能性があることも否定出来ません。

「裁判の撮影は証人に不当な圧力をかける手段となったり、
法廷秩序を乱すおそれがあることが理由です。
法廷においては、秩序維持のため退廷を命じる権限が裁判長にあり、
これに付随して録音撮影を禁止することができるとされています」

例えば強盗を行った者の刑事裁判では被害者が証言台に立つことがあるが、
もし強盗の仲間が「後で報復するぞ」と言わんばかりに
傍聴席からビデオ撮影していたら、
正しく証言することなんてできなくなるかもしれません。

「過去には傍聴席で録音録画する権利を争った裁判もあり、
最高裁判例で、法廷内のメモ(イラストも可)のみ認められています。
よくニュースなどで、法廷のスケッチが使用されるのは
メモや絵しか認められず、撮影が禁止されているからです」

「世間の耳目を集める事件では審理前の様子に限り
撮影が許可されることもあります」

過去には裁判の録音録画する権利で争われたこともあったという。

しかし、日本でも戦後間もない頃まで
裁判中の様子を撮影することはまったく問題がありませんでした。
現在も当時の報道機関が撮影した写真が現存しています。

ただ昭和20年代のカメラの性能では
室内の写真を撮るのに大掛かりな照明器具を持ち込まないと
明るく綺麗に撮れなかったので
それが裁判の邪魔になっていたそうです。

ある裁判中、そんな照明器具の電球が割れて
裁判官が怪我をしてしまうという事件がおきてしまいました。

それを受けて昭和24年、裁判中の撮影が許可制となり、
申請すれば「あたまどり」こそ許可されるものの、
事実上の禁止となって現在に至ります。

メモや絵しか認められていない

撮影が禁止されたため、裁判中の被告の様子、挙動を
報道する一手段として、法廷画家が活躍します。

一般傍聴席に座り、社会的に何かしらの影響を与えた被告が
法の前で今どのような態度で裁かれているのかを、
穴が開くほどに観察しスケッチブックに写しているのです。

法定画は実際にイラストレーター等の絵に対する
技量・知識のある者が依頼を受け、
実際に傍聴者として法廷内に入った上で絵画としてその様子を記載し、
事後にそれを仕上げた上で公開する目的で作成されるものです。

法廷画家になるには

法廷画家になるには特別な資格は必要ありません。
そのため、誰でもなれるといえばなれます。

しかし、被告人の外見の特徴や表情、身振り・手振りを正確に描写できることや
短時間で担当する記者の求めに応えられるようなイラストを複数、
かつ同時並行で仕上げられることなど、相応の技術が必要です。

一枚1万5000円から2万円で描いているようです。
新聞の1面で使われたりすると高いそう。

オウム真理教の麻原彰晃など1枚10万程度と言われています。
テレビではせいぜい数秒。

1件につきいくらかというのは相場がないので
明確には書けませが、交通費込みで8万円もらった人がいました。

そうして視聴者の方々は世間を騒がせた凶悪犯や汚職政治家が、
その後どのような姿、どのような態度で裁かれたのかを
ビジュアル情報として得られます。
今や法廷画は裁判報道には欠かせない重要なエレメントの一つとなっています。

インターネットを介したライブ配信が盛んな昨今、
始まる前しか撮ることができないというのは残念な気がします。
法廷秩序を保ちながらいつか裁判をライブ配信される日は来るのだろうか。

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