夫婦で年収500万円で毎月10万円の住宅ローンは危険!?
思わぬ落とし穴が・・・
住宅ローンは老後資金にまで影響を与える大きな選択です。
もしも借り方を間違えてしまうと…「老後破綻」を招く可能性もあります。
今回はそんな住宅ローンの思わぬ落とし穴を紹介します。
住宅のチラシに潜む落とし穴
あなたが賃貸に住んでいた場合、
「ずっと家賃を払い続けるのはもったいないなあ」
という考えに至った時にとある住宅の広告フレーズが目に飛び込んできます。
「頭金ゼロでもOK!」
「消費税10%前の今が買いどき!」
「マイナス金利の今が絶好のチャンス!」
チラシにある毎月の返済額の例を見ると確かに今の家賃よりも低い金額で
「これなら家を買ったほうがトクかも?」という結論に至ってしまうのも無理はありません。
実際にマンションのモデルルーム・住宅展示場に出向いたら、
今度は営業マンからのセールストークに合います。
「お客様の年収から逆算するとこれくらいの物件はラクに買えます!」
「これから頭金を貯めていくとその間に金利がどんどん上がっていくので、
超低金利の今のうちにローンを組んで買ったほうがおトクですよ!」
さまざまな話で購入を煽られます。
しかし、これらは売り手側からの発信情報はどれも物件を売るためのセールストーク。
あなたが家を買いたい気持ちでいっぱいの場合は
売り手側からの偏った情報であることに気がつかないものです。
そこでセールストークにまんまと乗せられて無理な購入をしてしまうと
万が一、ローン返済が困難な状況に陥っても
この住宅の売り手は何の責任も負ってはくれません。
住宅の売り手・ローンの貸し手があなたに教えてくれない
住宅ローンのカラクリ・リスクを詳しく知っておきましょう。
「年収の25%以内が目安」と言う言葉は信じないで
保険料・住宅ローン返済額などの「収入に対する目安」を聞かれることがありますが、
「収入の○%以内ならOK」なんて安易な判断の仕方は
家計管理をするうえで危険です!
例えば年収400万円の人と800万円の人の目安を
同じ基準で出すことができないからです。
住宅ローンの場合は、「ローン返済額は年収の25%以内ならOK」
なんて一般論を耳にしたことがあります。
しかし、一般的なサラリーマン家庭が年収25%もローン返済に充ててしまうと
家計はとてもカツカツで貧乏な生活を送らなくてはいけなくなります。
注目すべきは額面年収ではなく手取り年収。
例えばAさんは妻・子ども2人の4人家族、年収500万円。
その年収の 25%は125万円になり、
月々で計算すると約10万円強になります。
確かにこれくらいなら払えそうと思える金額ではありますよね。
でも年収500万円から税金・社会保険料が約105万円引かれ、
最終的な手取り金額は約395万円になり、
持ち家になると固定資産税が発生しますし、
マンション住まいなら月々の管理費・修繕積立金などがかかります。
ローン以外の住居費も含め年間住居費は165万円に。
この計算結果は年収の33%になります。
生活費・教育費・貯蓄などに回せるお金として使えるのは
残った230万円で年収の46%となります。
もし、月々の生活費・教育費が 15 万円、
家電製品の買い換え・帰省費用などを考えて
年間40万円の支出と考えると残りは年間10万円。
予定外の支出があった場合は貯蓄はもちろん無理ですし、
赤字家計に陥ってしまいます。
ですから一般論、目安の割合で単純に判断せずに返済額と他に必要な住居費を
自分の暮らしをしっかり反映させた家計に照らし合わせてみることが大切です。
お得とされる変動金利には借りすぎリスクが?!
セールストークで「1%を割った変動金利で借りればお得」
なんて話をよく聞きます。
でもこの変動金利でも借りすぎの落とし穴があります。
例えば毎月の住宅ローン返済額を11万円弱と仮定しましょう。
金利0.625%の変動金利型なら4000万円借りられます(35年返済)。
そのお金を35歳で借りた場合、金利上昇を楽観的に見ても…
60歳の時に1000万円以上のローンが残っている計算に?!
世帯年収600万円前後の会社員でさすがに4000万円は借りすぎです。
ですから毎月返済額だけ見てローンを組むのは大変危険なんです。
営業マンからのセールストークに、「当面は金利が低い変動金利を利用し、そして金利が上がる前に固定金利に切り替えればいい」なんて話もあります。
しかし、こちらも実現性がかなり低い話なんですよ。
変動と固定の切り替えはあまりうまくいかない
変動金利型は日銀の金利に連動し、
「変動金利が上がるならその数ヶ月前から固定金利が上がりはじめる」
なんて経済の約束事があります。
ですから変動金利が上がっていざ固定金利に切り替えようとしても、
固定金利はすでに上がっている可能性が大きいんですね。
2006年7月、日銀がゼロ金利を解除した時、
先行して6月頃から10年固定金利など長期固定のローン金利が急上昇。
10月に上がった変動金利が返済額に適用されたのは2007年1月。
「じゃあ、先行して上がる固定金利の動きを事前にチェックしていれば、
良いタイミングで固定に切り替えできるのでは?」
この質問に関しては銀行のシステム上の問題で実現が難しいのです。
通常なら銀行の固定金利発表は月末、
そしてその金利は翌月1日から適用されていきます。
月末の金利発表を見てから
「来月から固定金利が上がる!変動から固定に切り替えておかないと!」
と焦って手続きをしても適用になるのは翌月の高くなった固定金利です。
もし固定に変えたとしても変動金利の時より金利が高くなります。
そのことで返済額がアップしますから、
変動金利の時の返済額がもしも目一杯の金額だった場合、
固定金利に切り替えたくても切り替えることができません。
変動金利は変動金利のまま10年程度で完済できる金額で借りなくては大変なことになります。
営業マンの「返済試算」をそのまま鵜呑みにないこと
モデルルーム・展示場に来てくれた来場者に対して、
「無料FP相談」サービスなるものも行っています。
これは、不動産会社のセールスが作成した
資金プラン・購入者の収入と支出状況・家族構成などをもとに
FPの資格を持った人が相談に乗ってくれるというものです。
相談時間・内容がそれぞれ違いますが、
実際に多くの人が利用しています。
無料相談と聞くと、一見良いサービスに思えます。
ですが、今回は無料の意味を考える必要があります。
この時の相談を受ける側は無料相談会を行ってちゃんと報酬を受け取っています。
クライアントはモデルルーム・展示場の運営会社ですが
お金を払ってくれるのは不動産会社などです。
そんな仕組みの中で相談員からクライアントへ不利になるアドバイスなんてできるのでしょうか?
実際にモデルルームで「無料相談」を受け、
年収に対して借入額が多すぎるケースの相談では営業マンが
「奥さんが働けば大丈夫です」
「途中繰上げ返済して、残りは退職金で完済すれば大丈夫です」
など何度も何度も「大丈夫」を繰り返し、
その根拠が不確実なアドバイスだったりします。
35年ローンは禁じ手
長寿化が進んで老後に不安を持っている人も増えています。
一般人からもマスコミからもお金が気になるのか
「老後資金はいくら貯めると安心ですか?」とよく聞かれます。
しかし、いくら貯めても60歳時点で
住宅ローンが大量に残っているなら安心できません。
老後を安心なものにするためには
退職金をアテにした住宅ローンを組まないように注意しましょう。
モデルルームなどで営業マンから提案される返済プランは
大体が35年返済となっています。
返済期間は期間が長い方が毎月の返済額が少なく、
「これなら返せそう」と思ってしまいます。
しかし、返済期間は長いほど利息が増え、
60歳以降も完全返済できずに返済が続くケースもあります。
もし退職をお考えなら、ローンについて
「退職金で残りを一括返済すればいい」という考えはNGです。
年金がでない60代前半を働いていたとしても、
明らかに収入はダウンするでしょう。
退職金はこれまでの収入減の備えと
老後資金として取っておくべきお金です。
絶対にローン一括返済に充ててはいけないお金なのです。
例えば、35歳で住宅ローン3000万円を
35年返済・金利1.5%で借りたとしましょう。
途中一度も繰上げ返済しないと60歳時の残高は約1023万円。
これを退職金で一括返済すると
老後資金がまったく残らなくなるかもしれません。
60歳完済を目指して繰上げ返済するなら、
2~3年に1回100万円程度繰上げ返済が必要です。
教育費・老後資金を貯めつつ、
これだけの金額を繰上げ返済できるでしょうか?
でも毎月1万円返済額が増やせるなら、
返済期間は5年短縮され30年にできます。
60歳時の残高は約598万円と、
35年返済時よりも約425万円も減らせます。
住宅ローンでの35年返済は禁じ手としましょう。
新築ではなく中古住宅も検討しよう
新築物件だけに絞って購入を検討する人が多いですが、
中古住宅を選択肢に含めないのはもったいないです。
中古住宅はやはり割安なのが魅力。
中古住宅も新築と同様の住宅ローンを使うことができます。
あとこれは意外に知られていないのですが
中古住宅の売り主が会社員など個人であれば、
物件価格に消費税がかかりません。
つまり消費税率が8%から10%にアップしても、
この場合なら大きな影響は受けないのです。
また、中古住宅なら部屋を内見することができますし、
中古マンションなら住民が育て世代が多いとかリタイア世代が多いなど
住民の属性を購入前に知ることができるのもメリットです。
デメリットとして住宅ローン減税・住宅資金贈与の特例の拡充策は
消費税増税後に不動産取引が冷え込まないための対策。
ですから、拡充された減税制度は
消費税がかからない中古物件は対象外なんです。
そして、不動産事業者の仲介手数料(最大で物件価格の3%+6万円の金額+消費税)がかかるのが一般的な中古住宅です。
リフォーム代・減税効果も中古住宅では考慮する必要がありますが
現在は新築物件が高騰していますので
中古住宅も視野に入れることで選択肢が大幅に増えていくことでしょう。