なぜトラックの運転手はエンジンを切らずに休憩するのか?
トラック業界の闇が垣間見える…




トラックってとても大きな車なので街中で路上駐車している時とか、
駐車場に停まっている時でも邪魔だなと思われることが多いようですね。

さらに、トラックを路肩に停めて休んでいたり、
ハンドルに足をあげて休んでいたりする光景を目にした一般人は
「マナーが悪いな~」と思ったりするものです。

しかし、トラックというのはその大きさが故にとにかく行き場がないのです。

だから、路肩で休憩をしていたとしても
現状ではやむを得ないというケースがほとんどだと思います。

ちょっと悪そう、マナーが悪いと思われがちなトラックですが、
私たち国民の生活を支えてくれている存在でもあるという事を忘れてはいけません。

ただ、そんなトラックにはもう1つ多くの人が抱く疑問があるのです。

今回はそんななぜトラックの運転手は
エンジンを切らずに休憩時するのかを紹介します。

なぜトラックの運転手はエンジンを切らずに休憩時するのか?

トラックが休憩している光景を見たことがある人もいるでしょう。

そんな中、なぜエンジンを切らないで休憩するのかという疑問の声が多々あがっているのです。

例えば、高速道路のサービスエリアとかコンビニの駐車場とか、
はたまた路肩とかでエンジンをつけっぱにするトラック。

そして運転席にはハンドルに足を乗せて休憩している運転手さんがいるのです。

排気ガスがずっと出ているという事に関して言えば、
地球環境に悪いとお怒りの声をあげる人もいるでしょう。

ただ、トラック運転手さん自身も
エンジンをつけっぱなしという状況には罪悪感を抱いているそうです。
できることならばエンジンを切って休憩したいと考えています。

トラック運転手さんがそう思っているなら、
エンジンを切ればいいだけでは?と思うでしょう。

しかし、エンジンを切ることができない事情を抱えているのです。

理由1.夏は暑くて冬は寒い環境

とても大きな問題、それは夏がとても暑くて冬はとても寒いという状況です。

暑さ、寒さというのは乗用車と変わりません。

つまり、トラック運転手さんだけではなく、
車に乗る人であればその暑さや寒さは簡単に想像ができるでしょう。

真夏の熱帯夜を想像してください・・・
あの暑さで狭いトラックの中で仮眠ができるか?

もちろん地域やその時の状況などにもよりますが、
夏場のトラック車内は70度近い温度まで達するのです。

そんな車内で仮眠を取ったら、
起きた時には死んでいる可能性が大ですからね。

基本的に長距離のトラック運転手さんというのは
朝一に荷主の所に到着できるように
夜中に近くまで走ってから、数時間の仮眠をとる人が多いです。

そのため、仮眠をとる場所は高速道路のサービスエリアやコンビニの駐車場、
路肩などになってしまうのです。

そんな場所には同じように時間調整をしながら
仮眠や休憩を取っているトラックがたくさん集まっています。

それだけたくさんのトラックが集まると
トラックの運転手さん自身も排気ガスが車の中に入って臭いと感じたり、
エンジン音がうるさいと感じることがありますよね。

だからこそ、窓を開けて温度調整をするなんて事ができないのです。

冬になればなったで今度はとても寒くなりますので手足が冷えて眠れません。

エンジンを切ったとしても温度調整ができるような
車載用暖房機器というものが販売されています。

しかし、それには費用がかかりますし、
数時間かけて温めておく必要があります。

さらにその割には使える時間が短い、
外気温によってはほぼ効果がないという状況なのです。

こうやって暑さや寒さへの解決となるアイテムや
対策が存在していないのが現状です。

こんな状況なら、エンジンをつけっぱなしにするのも納得ができますよね。

理由2.積み荷を守る

エンジンを切らないで休憩する理由として
後ろに積んでいる荷物に関係することがあります。

それは、荷物を守る目的があるからです。

トラックというのは冷蔵冷凍車という種類があります。

これは名前の通り、
トラックの荷台に冷蔵・冷凍機能が付いているもので、
簡単に言えば『クール便』ってやつですね。

この冷蔵冷凍車を大きく分けると2種類あり、
サブエンジン式と直結式になります。

サブエンジン式というのは冷凍機の音が大きいのですが、
車のエンジンを切ったとしても荷室を冷やし続けることができます。

直結式というのはトラックのエンジンの動力を使って
冷凍機のコンプレッサーを動かしています。

そのため、直結式の場合は車のエンジンを切ると
冷蔵冷凍機能も一緒に切れてしまうのです。

さすがに荷物が溶けてしまったら、大問題ですよね。

つまり、直結式の冷蔵冷凍機能が付いているトラックというのは
エンジンを切ることができないのです。

エンジンを切れば、
積み荷を傷めることになりますので
切りたくても切れないというのが本音です。

エンジンを切らないとトラックのエンジンがずっと
ガタガタとうるさく小刻みに揺れます。

トラック運転手さんも自分の真下でエンジンがずっと動いている運転席で
ゆっくりと快適に休憩ができるわけがないのです。

さらに雪が多い場所であれば雪がマフラーを塞いでしまい
一酸化炭素中毒になる可能性もあります。

一酸化炭素中毒になるリスクがあるので
エンジンを切って休みたいと思うのは当たり前です。

それでもトラック運転手さんたちは
エンジンを切ることなく休憩をしなければならないのです。

ちなみにエアコンがない状態で仮眠を取ったら
眠りはかなり浅くなりますし、
その後の仕事に影響が出てくる可能性もあります。

つまり事故を増やす原因にもなりかねないってことです。

だからこそ、エンジンをつけてエアコンを効かせて
しっかり休憩するのが望ましいのです。

再配達を減らすとアイドリング問題解決!?

トラック運転手さんが無駄なアイドリングをしなければならない大きな原因は

・トラックステーションなど休憩所が少ないこと
・予定より早く到着することを受け入れない荷主第一主義の体制

この2つが大きな原因になっていると考えられます。

今の所、トラック運転手さんがゆっくりと休憩できる
トラックステーションというのは全国で30か所程度しかありません。

宿泊施設が完備されているトラックステーションに限れば、
もっと数は少なくなってしまいます。

そんなトラック運転手さんにとって厳しい環境が
蔓延している中で早く到着することが許されず、
近い場所まで行ってから待機するという状況がトラック業界の闇なのです。

行き場がなくなったトラック運転手たちは
路肩であってもエンジンをつけっぱなしにして、
足をあげながら休憩をするしかないのです。

その一方でアイドリング中にトラックから出てくる排気ガスを
どうにかしないといけないというのも大きな問題の1つとなります。

このような現状を受けて各物流業者側は
デジタルタコグラフという運行記録計によって、
ドライバーのアイドリング時間を計測しています。

さらに、アイドリングストップ機能が付いているトラックを取り入れるなど、
ドライバーに不必要にアイドリングさせないようにしています。

それから、国土交通省やトラック協会でも
様々な面からトラックの排気ガスに対する工夫や取り組みをしています。

例えば・・・
「排ガス規制の強化」
「車載用冷暖房機器の購入に対する助成金の交付」など。

ちなみに、こういったトラックの排気ガスを削減することに関していえば、
私たちにもできることがあります。

それは再配達を減らすことです。

EC利用の増加に伴って2017年に
日本国内で配送された荷物の総数が42.5億個となっています。

つまり、ドライバーが1人で1日に運んでいる荷物の量は
150~200個という事になります。

さらにそのうちの2割が再配達になっているのです。

どういうことかというと
年間に9万人のドライバーが働いているという事になります。

さらにそのトラックから出てくる排気ガスは年間で42万トンに相当します。
トラック運転手さんだってできることなら邪魔になりたくはありません。

無駄にエンジンをつけっぱなしにしたくもありません。

仮眠や休憩はできるだけ足を伸ばせるような場所で行いたいのに
それができないという現状に置かれています。

日本の貨物輸送の約9割はトラックが担っています。

それを考えると、トラック運転手さんの行動を何もしらずに
「邪魔!」「マナーが悪い」というのはどうかと思いませんか?

これは日本の物流の方針、考え方などに
大きな問題があるのかなと感じてしまいます。

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