雨をしのぐ技術が平安時代の傘から進歩してない理由…
なかなか根深い問題だった…
平安時代から変わらない傘の姿
映画やドラマの悲しいシーンではよく雨が降っていますね。
それだけ雨は多くの人々を憂鬱にさせるものとして
世界中で認識されてきました。
こうした気分をもたらす理由のひとつに
雨対策の煩わしさがあげられます。
普通、雨に濡れるのを防ぐ対策といえば、
傘をさすか雨合羽を着る以外にはまずありません。
傘をさせば片手が不自由になり、雨合羽は着脱が面倒と言われます。
雨対策の面倒さはそのまま私たちの雨嫌いにつながっているようです。
2014年頃、空気の壁で雨に濡れるのを防ぐ
エアーアンブレラというものが話題になりました。
新体操で使うバトンのような形をしていますが、
かなりユニークな機能を兼ね備えています。
下から空気を吸い込んでバトンの先のような部分から空気を吹き出し、
その空気の膜で雨をしのげるという構造になっています。
これにより傘布の部分いらずで雨を防ぐことが可能になりました。
しかし、こちらはいまだ商品化には至っておらず、
現在大半の人は傘をさすことを選んでいます。
そんな雨傘の歴史は日本では平安時代にまで遡ります。
日本人は日傘からヒントを得て雨傘を開発・導入するに至ったそうです。
意外と深い傘の歴史
傘の歴史は4000年前に遡ります。
日傘としての使用はすでに約4000年も前に始まっているようで
エジプトやペルシャなどに証拠づける壁画などが発見されています。
傘はもともと貴族や高僧の日よけとして使われていて
「尊い人を日差しから守るとともに権威の象徴であった」
日本の傘の歴史は明治時代にイギリスイタリヤから輸入された
「西洋傘」と「和傘」のふたつルーツがあります。
傘のルーツ
和傘
日本で歴史が古いのは和傘で
中国から伝えられたとされています。
雨の多い日本では傘は必需品で古来和傘が使われていました。
室町時代になるとその和紙に油を塗って防水を施し、
雨傘としても使われるようになりました。
和傘が閉じる事ができるようになったのは安土桃山時代。
広く一般に使われだしたのは
分業制の発達した江戸時代中期以降のことであり、
それ以前の庶民の雨具といえば菅笠と簑でした。
元禄年間からは柄も短くなり、
蛇の目傘がこの頃から僧侶や医者達に使用されるようになったそうです。
広げた際の面積の大きさに着目し、
雨天時に屋号をデザインした傘を客に貸与して
店の名前を宣伝して貰うといった事も行われたほか、
歌舞伎の小道具としても使用されるようになりました。
しかし、明治時代に入ると
洋傘が使われ始めたため急激に衰退。
現在では和傘の産地として有名な岐阜をはじめ、
京都、金沢、徳島、鳥取などに、少数の和傘製造店が残るだけです。
洋傘
古代エジプト、ペルシャ、インドなど古代文明発祥の地では
国王を太陽の日差しから守るために用いられていました。
傘が一般的に使われるようになったのはギリシア時代。
当時の傘は閉じることができませんでした。
13世紀に入ると閉じることのできる傘が作られるようになり、
鯨の骨や木がフレームとして使われていました。
今日のような、開いたり閉じたりできる傘は
13世紀にイタリアで作られたといわれています。
当時、傘の骨組には鯨の骨や木が使われていました。
18世紀頃にイギリスで現在の構造の物が開発され、大幅に普及しました。
そんな深い歴史があっても形状や役割といったものは
ここ数百年ほとんど進化しておらず
日傘、雨傘、和紙、ナイロン、用途や材質は違っても
基本構造は昔から変わっていません。
国民の40%が雨対策の進化のなさを感じている
「雨をよける方法・製品は、人類の歴史の中で全く進化していないと思う」
と回答した人の割合は44.2%にのぼります。
半分近くの国民が雨対策技術の進化のなさを感じているようです。
しかし、これまで他の雨対策を試してこなかったわけではありません。
手で持つ必要のない傘の発明やエアアンブレラもその試みのひとつです。
ただ、そのどれもが雨の日の風景を一変するほどの力を持ち得ていませんでした。
雨をしのぐ技術が進歩してない理由
雨対策が平安時代から進歩してない理由として
「雨に濡れること」と「雨対策のわずらわしさ」の
絶妙なバランスが原因とされています。
「毎日雨が降っているならまだしも
雨はたまに降るものなので安い傘で済ませてしまう。
スゴい技術の雨対策グッズが発明されても
たぶん高いだろうからしばらくは買わない」「雨がホントにムカつくのはゲリラ豪雨くらい。
雨合羽を着る気はないし、たぶんこれからも折り畳み傘を持ち続けると思います」「車移動がメインなので濡れるのは一瞬。
歩いてるときも全く濡れないに越したことはないけど結局我慢してしまう」
仮にこうした均衡状態が平安時代から続いていたとすると
今後もその状況が変わることはないかもしれません。
新技術の開発が進んでも必ずしも皆がそれを使うわけではないことは
社会学におけるイノベーター理論で説明されてきました。
だとすればこの傘問題、思った以上になかなか根深いかもしれませんね。